プログラミング経験者であっても、言語ごとのツールや流儀を最初に理解することは重要です。この章では、Pythonの開発環境を整え、基本的なツールの使い方を学びます。
手元の環境で本格的に開発を進めるために、Pythonのインストール方法を紹介します。
WindowsでPythonをインストールするには、主に2つの方法があります。
python コマンドを直接実行できるようになり便利です。macOSでは、Homebrew というパッケージマネージャを使ってインストールするのが簡単です。
brew install python
もちろん、Windowsと同様に公式サイトからインストーラをダウンロードすることも可能です。多くのLinuxディストリビューションには初めからPythonがインストールされていますが、最新版を使いたい場合はディストリビューションのパッケージマネージャ(apt, yumなど)を利用するのが一般的です。
より高度な開発や、複数のプロジェクトを並行して進める場合は、バージョン管理ツールや統合的な環境管理ツールの利用が推奨されます。
REPL(Read-Eval-Print Loop)は、入力したコードをその場で実行し、結果をすぐに見ることができる強力な学習・デバッグツールです。
このウェブサイトではドキュメント内に Python 3.13.2 の実行環境を埋め込んでいます。 以下のように青枠で囲われたコード例には自由にPythonコードを書いて試すことができます。気軽に利用してください。
インストールが完了したら、自分のPCのターミナル(コマンドプロンプトやPowerShellなど)で python と入力すれば、同じ対話モードを起動できます。
$ python
Python 3.11.5 (...)
Type "help", "copyright", "credits" or "license" for more information.
>>>>>> というプロンプトが表示されたら準備完了です。
print()のような組み込み関数を呼び出したりできます。help() と入力するとヘルプが表示されます。調べたいモジュールや関数名(例: str)を入力するとドキュメントが表示されます。
quit と入力します。exit() と入力するか、ショートカットキー(macOS/Linuxでは Ctrl + D、Windowsでは Ctrl + Z を押してからEnter)を使用します。
一連の処理をまとめて実行する場合は、.py という拡張子を持つファイルにコードを記述します。例えば、hello.py というファイルを以下のように作成します。
REPLでは式を入力するだけでも結果が表示されていましたが、スクリプトで結果を表示するには print() 関数を使う必要があります。
このスクリプトを実行するには、ターミナルで python hello.py のようにコマンドを入力します。
このウェブサイト上では以下のように実行ボタンをクリックするとスクリプトの実行結果が表示されます。上の hello1.py のコードを変更して再度実行すると結果も変わるはずです。試してみてください。
python hello.py前述の hello.py のようにファイルの1行目から処理を書いても問題なく動作しますが、一般的には以下のようなお決まりの書き方が用いられます。
python hello2.pyなぜわざわざ if __name__ == "__main__": を使うのでしょうか?
それは、書いたコードを「スクリプトとして直接実行する」場合と、「他のファイルから部品(モジュール)として読み込んで使う」場合の両方に対応できるようにするためです。
Pythonでは、ファイルは他のファイルから import 文で読み込むことができます。このとき、読み込まれたファイル(モジュール)は上から順に実行されます。
if __name__ == "__main__": を使うと、「このファイルがコマンドラインから直接 python a.py のように実行された時だけ、このブロックの中の処理を実行してね」 という意味になります。
例:再利用可能な関数を持つスクリプト
このファイルを2通りの方法で使ってみます。
直接スクリプトとして実行する
python my_utils.py他のファイルからモジュールとして読み込む
python main_app.pymy_utils.py のテストコード(--- Running Test ---など)は実行されず、say_hello 関数だけを部品として利用できました。
このように、if __name__ == "__main__": は、再利用可能な関数やクラスの定義と、そのファイル単体で動かすための処理をきれいに分離するための、Pythonにおける非常に重要な作法です。
Pythonの強力なエコシステムは、豊富なサードパーティ製パッケージ(ライブラリ)によって支えられています。これらのパッケージを管理するのが pip です。
しかし、プロジェクトごとに異なるバージョンのパッケージを使いたい場合、依存関係の衝突が問題になります。これを解決するのが 仮想環境 で、Pythonでは venv モジュールを使って作成するのが標準的です。
仮想環境とは? 🚧 プロジェクト専用の独立したPython実行環境です。ここでインストールしたパッケージはシステム全体には影響を与えず、そのプロジェクト内に限定されます。
基本的な流れ:
仮想環境の作成:
# .venvという名前の仮想環境を作成
python -m venv .venv仮想環境の有効化(Activate):
# macOS / Linux
source .venv/bin/activate
# Windows (PowerShell)
.\.venv\Scripts\Activate.ps1有効化すると、ターミナルのプロンプトに (.venv) のような表示が付きます。
パッケージのインストール:
有効化された環境で pip を使ってパッケージをインストールします。
(.venv) $ pip install requests仮想環境の無効化(Deactivate):
(.venv) $ deactivatepyenv でPythonバージョンを固定し、venv でプロジェクトのパッケージを隔離する のが、現代的なPython開発の基本スタイルです。(前述の Conda は、このPythonバージョン管理と環境・パッケージ管理を両方とも行うことができます。)